そのデパートは子供連れが多かったのですが、私が座ったソファも例外なく。
隣りには、ベビーカーを引いた若い夫婦が座りました。
子供は、1、2歳くらいでしょうか。
すやすやと眠っていました。
しばらくすると、夫婦の会話を遮るように子供がぐずり始めました。
慣れた様子でベビーカーを揺らす奥さんと、ぐずる子供の頬を優しく触る旦那さん。
なんとも言えない幸せそうな雰囲気でした。
ふと、そんな光景を視界の片隅に収めながら本のページを捲る私。
自明のことですが、今ぐずっている子供とかつて同い年だったわけであります。
そんな当たり前のことに、気がつきました。
きっと私の父や母も、ぐずる私を目の前の夫婦と同じように。
あやしては泣き止ませて、寝かしつけんとしたのでしょう。
そんなことを考えると、不思議な気持ちになりました。
私はそんな時代を経て、今やぐっと夫婦の年齢に近づいたのですから。
身近な人の愛情に育まれて、大きくなって、子供を育てる年齢になったのですから。
世界は今日も時を刻みます。
チクタクと休むことなく進み続けます。
願わくば隣りの夫婦のように、幸せな時間とたくさん出会いたい。
そんなことを考えながら、私はソファを後にしました。
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