夏の夜が好きだ。
季節の匂いはいろいろあるけれど、夏の夜にかぐ何とも言えないあの匂いが好きだ。
今日、環八通り沿いを歩いた。
まだ少し明るい夜の街を、車のテールライトが柔く照らしていた。
僕はふと感じた夏の夜の匂いに、いつかのワンシーンを思い出そうとした。
でも、僕の記憶からは特定のシーンは浮かんでこなかった。
雲を掴むようにして僕は、記憶の海から現実に引き戻されて、漂って、漂った。
夏の夜が好きだ。
きっと、昔から好きだった。
小さな子どもが母親の手に引かれて歩くのと、すれ違った。
僕は少し平和的に微笑んで、止まらずに歩くのだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿